【Special Issue】まさか無給油で走りきれるのだろうか?

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スーパーフォーミュラのサイトのSpecial Issue、TechnologyLaboratoryにて2014年のSUGOでのレーシングをご紹介いただきました。

「まさか無給油で走りきれるのだろうか?」

中盤戦に向けて上位陣が「綱引き」を続けるようにラップタイムをそろえている中で発生した次の乱れは14周目、7番手に付けていた塚越がレインボーコーナーへのアプローチでスピン、コースアウト。グラベルに入り込むが自力で脱出してその周回の終わりでピットへ。ルーティン・ストップのはずだったがタイヤ4輪の交換を進める一方で給油リグのノズルがなかなか入らず、大幅にタイムロス。周回遅れになってコースに復帰するが、トップが17周目に入ろうとする後方で最終コーナーの深く回り込むすり鉢状の場所でタイヤが滑り、反射的にカウンターステアを当てるも振られてしまってそのまま外側にコースオフ。何とかグリーン上でマシンをコントロールしようと試みるが、立ち上がりゾーンのアウト側のクラッシュバリアに左側面から当たってしまう。
前々戦のツインリンクもてぎ以降、ホンダ・エンジンのパフォーマンスが向上している中で、塚越とリウッツィのマシンはコーナリングの中でタイヤの粘りが少し足りない印象を受けていた。それがこういう瞬間にドライバーにとってコントロールのシビアさとして現れたのかもしれない。ましてこの時はタイヤ交換直後。まだ暖まっていないタイヤはきわめて滑りやすい。サスペンションのストロークがごく小さい今日の純レーシングマシンとはいえ、その伸縮にしなやかさを持たせるほどにタイヤのグリップ変動が抑えられる。以前も書いたように、このあたりのセットアップの差がマシンの動きから読み取れるのがSF14の素質でもある。そして、そのしなやかさを最もうまく作っている印象を受けるマシンを駆る野尻が、ここまではトップを走り続けている。
それはさておき、塚越のクラッシュによって最終コーナー外側に並べられたクラッシュバリアのスポンジブロックが散乱してしまった。これを整理し、再度固定しないと競技は進められない。そこで当然、セーフティカー(SC)が導入された。それにタイミングを合わせて多くのマシンが一斉にピットに飛び込んできた。これが18周完了時点。

 

それでも中山(雄)はトップを守って走り続ける。残り10周を切って野尻もフルアタックの走りに切り替えて追い上げる。しかしそう簡単に間隔は縮まらない。もしかして燃料が足りてしまうのか? 見守る者の脳裏にその「?」が次第に大きくなっていった65周目、残すところわずかに3周半、バックストレッチを駆け下る中山(雄)のスピードが目に見えて鈍った。その右側から野尻があっさり追い越してゆく。やっぱり無理だった。その周回の終わりでピットロードに入った中山(雄)はまさにスプラッシュ・アンド・ゴー、残り3周分の燃料だけを注ぎ足してコースに戻るが、ポジションは12番手。次の67周目に1分06秒743のレース中ベストラップまでたたき出してみせたものの、夢は消えた。
これも「タラレバ」ではあるけれども、ステイアウトして隊列をリードする状況になったところで中山(雄)の周回ペースは1分9秒台。これを維持して後続を押さえ込む走りをうまく続ければ、このコースは少しぐらいラップタイムの差があっても簡単には抜けないだけに、先頭集団の一角をもぎ取ることは可能だったのではないか。1分9秒台まで落せば燃料補給無しで走りきれた可能性はあると、レース後のトークの中で田中エンジニアも語っていたのではある。あるいはまた、後半にもう一度、セーフティカーが入っていれば、3周分の燃料はセーブできたかもしれない。中山雄一とKCMGチームはそこに賭けたのだったが…。

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かくしてSF14+NREが登場した2014年シーズンの6戦目にして、ホンダ・エンジン搭載マシンの初優勝。それも今年からスーパーフォーミュラにステップアップしたルーキー、野尻によって達成された。「今日の野尻はパーフェクトでした。素晴らしかった」。シーズン当初から速さの片鱗を見せてはいたものの、いざレースとなるとそれが持続しない。しなやかで速いセットアップを作り上げる一方でそんな野尻を時に厳しく導いてきた田中エンジニアは、ストレートな称賛の一言でこの日の戦いを締めくくったのだった。

 

昨年のSUGOでのレースは、中山雄一にとっても、チームにとっても非常にドラマティックな一戦となりました。
レース終盤、約2.5秒の給油の後、使い古したタイヤで叩きだしたファステストラップ。

マシンの上で戦う中山雄一の後ろには、祈るように勝利を望むチームの姿がありました。

そして、2015年、今年も沢山のドラマが生み出されると思います。
中山雄一だけでなく、沢山の物語の詰まったレーシングの楽しさを、皆様にも共有していただければ幸いです。

今回の記事を参照させていただきましたページはこちらです↓
http://superformula.net/sf/enjoy/2014/special/technology-laboratory-007.shtml

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